ホワイトライト、サマーズエンド
『嵜本里央』

県の学生写真コンクールで優勝したとか言って、広報に名前が乗っていた。
俺がリオウ、と呼ぶと、リオはくすっと笑って言った。

「リオだよ。名前負けしてテンション低くて、ごめんね」

ブラジルのカーニバルのことを言ってるんだと、しばらく経ってから俺は気付いた。
おかしな風な、でも聡明な女だった。
俺はそれ以降なんとなく、ちょくちょくリオのいるクラスに通った。
それでもリオは微笑むだけでつれなかった。

結局高校は別々になり、俺はサッカー部に入るも途中でやめ、学校もサボりがちになり、
仲間とバイクを走らせたりして適当に当てのない高校生活を送っていた。
別に理由は大したことじゃない。
公言出来るとすれば暇だったのと、誰も俺にきちんと学校に行けとは言わなかったからだ。

学校に行かず真っ昼間、街をうろついているときにスカウトを受けた。
モデル事務所だった。
母親が女優、父親がテレビプロデューサーの俺にはなんてことはない選択。
事務所に入ったのはコネではなかったが、母親はあんた何かやらかさないでね、と怪訝な顔をして、
父親は軌道に乗ればおれたちの脛をかじられることもないだろうとせせら笑った。
7個下の弟だけが兄貴すげえな、と喜んでくれた。

高校卒業の少し前に例の腕時計のコマーシャルポスターを撮った。
世界が少しだけ、自分に注目していると思っていた。
『御崎龍』という仰々しい本名がメディアや紙面に乗って
俺は誇らしいような、恥ずかしいような、それでもどこか現実でないような妙な感覚だった。
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