ホワイトライト、サマーズエンド
「なんなんだよ」

帰りしなもう1度リオに声をかけたがひどく酔っぱらっていて、
青ざめた顔で、俺を見ようとはしなかった。
横で介抱していたリオの友人は何故か俺にごめんね、と謝った。

「おいリュウ、2件目カラオケなんだけど、行くか?」

小野瀬がエレベーターの前で叫ぶ。
同じ高校に進んだグループの奴らと、より一層派手なギャルになっている女たちが騒ぎながら俺に手を振る。

「いや、悪ぃ。俺今日いいわ」

はーなんだよーという小野瀬の声に混じって、聞き覚えのある甲高い女の声が聞こえた。

「あの女のどこがいいわけ?」

さぁ、なんでかな。
俺が向き直すと、リオは血の気の引いた顔で荷物をまとめていた。

「おい」

声をかけるとリオはさっと立ち上がったが、またふらふらとその場にへたりこんだ。

「飲み過ぎたね、はは」

リオの丸い目がとろんと泳ぎ、俺の方を向いた。
表情は眠そうだったが、目の奥では何か獲物を狙う獣がいるような、そんな気がした。
俺はそれが何なのか確かめたくなって、リオの腕を掴み立たせ、
エレベーター前でたむろする人をかき分け、外階段に連れ出した。

「意味わかんないよね、ごめん」

5月の夜の風はまだ冷たく、俺たち2人の間をいたずらに通り抜けては冷やしていく。
リオは少し涙目で、眉間にしわを寄せて唇を噛んで、そう言ったきりずっと下を向いていた。

4年ぶりに見る彼女はあの頃と何も変わっていないと思っていたが、違った。
奔放な少女は、一人の不可思議な魅力を持つ大人の女になっていた。

俺はそのとき始めて、見返りや手段を選ばずに目の前の女を自分のものにしたいという欲望にかられた。
そんな初めて覚える感情が波のように押し寄せ、心の内壁に焦げ付いていく。
その衝動でリオを抱きよせ、俺の濾過されない感情はそのまま口から飛び出してきた。

「お前といると普通でいられない」

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