となり
『ごめん。信吾、ちょっと先に玄関で待ってて』と
私は信吾に叫ぶと
彼の後ろに付いていく

『瑞木君、何処に行くの?』と
私の問いかけに彼は
何も言わずに歩いている
私はひたすら彼に付いて行くと
それはあの桜の木へ
向かう道だった

外廊下に出ると陽射しが眩しく
まだムシムシして暑かった

彼は桜の木の下で急に足を止め
私に背を向けたまま
『ごめんな、信吾待ってんのに、呼び止めて』と
彼は言うと少し沈黙が続く

ザワザワと風で葉が揺れる音
彼は大きく息を吐いて振り返る
彼の顔を見て私は
胸がドキドキすると
彼から目を反らした
すると彼が口を開いた
< 123 / 411 >

この作品をシェア

pagetop