となり
彼の母親のことで
休みがちだった
部活にも冬休み明けから
本格的に行き始める
それは特に練習しないと
いけないとかたいして
理由はなかったけれど
何かに打ち込んでいられる
物があれば少しでも気持ちが
落ち着くと感じたからだった

そして彼は言っていた
私の部室から見えるグランドは
彼も私の演奏をしている姿が
見えること…
私が彼を見ていた様に
彼も演奏が始まると
走る足を止め私を見ていたこと

彼は一生懸命に楽器を
吹いていた私の姿が
とても好きだったと…
何だかそれがとても
照れ臭くて嬉しかった
だけど私も彼と同じ様に
部室から走る姿を
見ていたことは
彼には秘密にしておいた
私だけ幸せな気持ちを
独り占めしたいと思った

部活を終わらせると
自転車を走らせ家に帰る

いつの間にかに帰り道の
遊歩道の桜の木が
蕾をつけ始めていた

まだ冬休みが
明けたばかりなのに
もう春を知らせている

そして私は蕾を見ながら
自転車をゆっくりこぐ

もう今年で中学最後の年になる
気が付けばあっという間に
中学も卒業だ―
長いようで短いこの三年間で
色々なことを知り
そして沢山のことを経験した
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