となり
『はい、空太くん~もう一本』と
手を挙げながら笑顔で
声をかけている女の子がいた

私は彼を遠くから見つめ
不安な気持ちが過った

彼は彼女の言葉を聞くと
何度も走り出しては止まる
どうやらタイムを
測っているようだった

私はそんな彼をずっと見つめ
その彼女が私の視線を
感じたのか私視線を向けた
それに気づいたのか
彼も同じように振り返る

『ん?もえ?』と
彼は細目になりながら
確認するように私の方を見た

『もえ』と大きな声を出し
そして彼は走り出す
『え?空太君?』と
彼女は声をかけると
彼は立ち止まり
『悪い、彼女なんだ』と
言うと再び走り出した

息を切らせながら
彼は私の前に立ち顔を見る

『もえ、どうしたんだよ。突然でビックリした』と
彼は少し照れながら
そして私の知っている
いつもの笑顔で笑った

だけど私は何故か
素直になれずに
少し不機嫌気味に
『ちょっと通りかかっただけ。可愛い子と仲良くしちゃって、何かお邪魔しちゃったみたいだし帰る』と
私は彼に背を向けると
私は嫌な気持ちが溢れ
涙が出そうになっていた
< 183 / 411 >

この作品をシェア

pagetop