となり
『何怒ってんの?お邪魔って、あれは、ただのマネージャーだし。通りすがりってどんだけ遠くまで来て、通りすがりなわけ?』と
彼は再び笑いながら言った
『別に怒ってないし。本当に通りすがりだもん。何がマネージャーよ、空太くん~なんて甘い声で呼ばれちゃって。一人の部員のために、わざわざ日曜日に学校来てタイム測るわけ?』と
私は彼に会えて嬉しいのに
可愛くないセリフが
次から次へと口から吐き出る

『ば~か。俺だけじゃねぇし、もえが知らないだけで、あちこちグランド走ってる部員はみんな陸上部だよ。甘い声ってなんだよ。もえも俺のこと甘い声で呼べば?彼女になっても、今だに瑞木君って呼んでるのはもえだろ。それに父さんと暮らすことになって、母さんの旧姓瑞木から父さんの方の佐藤に苗字も直したからもう瑞木君じゃないぞ』と
彼は私の頭をコツンと叩き
大笑いをすると
私の顔を覗き込んだ

そしてそこには変わらない
私の知っている彼の姿と
変わらなく付けられた
お揃いの指輪が光っていた

そして彼は私の顔を見ると
『あれ?泣かないの?もえ泣き虫だからこう言う場面はすぐ泣いちゃうじゃん』と
彼は私の手を握ると
ゆっくり歩きだした
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