となり
体育館に入ると
ザワザワと生徒が騒ぐ中
校長先生の長い話が始まる
アクビをしながら
聞いている生徒が目立つほど
退屈な時間だった

体育館の横の扉から
急に冷たい風が吹き抜け
私は入学式のことを
ふと思い出していた

彼を見つけたあの日のこと―
その瞬間…
突然頭の中の記憶が真っ暗になり
私は一瞬意識が遠くなった

バタン―と大きな音と共に
私はその場に倒れこんだ

『もえ?』と
梨沙子は振り返り
私を抱き寄せ叫ぶ
回りはザワザワと
生徒が騒ぎだしながら
先生が私を抱えて
保健室に向かった

『静かに、大丈夫だから、静かに』と
先生がザワザワし始めた
生徒に声をかける

そして目を覚ますと
私は布団の中にいた
体を起こし辺りを見渡す
自分が保健室に
運ばれたことがわかった

ベッドを囲んだ
カーテンが開くと
『目覚めた?』と
保健の先生が声をかけ
『私?』と答えると
『倒れたのよ。具合どう?』と
先生は問いかけ
私は軽く頷きながら
布団から出ると
急な立ちくらみに襲われ
ベッドの下にしゃがみこむ

『ちょっと大丈夫?まだ横になってたら?始業式の後に入学式があるから、まだ時間大丈夫よ』と
先生が私を支えベッドに戻す
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