となり
私達は無言のまま
診察室を出ると
母親は私と目を合わさずに
歩き出し会計をしに
受け付けに向かった

私は一足先に病院の玄関を出て
外に出ると体温が一気に下がる

―未成年なので、処置をするかは、早めに決断して下さい―と
先生の言葉が頭の中で
何度も繰り返し流れている

¨処置¨…
それは赤ちゃんを殺す―
と言うことなのか…
未成年と言うことだけで
私には決定権はなく
赤ちゃんを産んではいけない
―そう遠回しに
言われていることに気付くと
無性に悲しくなった

そして私はそっと
自分のお腹に手を当て
実感のない赤ちゃんに
『産まれたい?産まれたくない?』と
返答のない問いかけに
私の体は急に震え出した
そして彼の顔を
思い出していた―

母親が病院から出てくると
母親は何も言わずに
車に乗り込みエンジンをかける
私も無言のまま車に乗り込むと
母親は私と一切目を合わさず
そのまま車は走り出した
車内では気まずい
空気が流れていた―
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