となり
『おいっ、どうした?』と
私の異変に気が付いたのか
彼が私の顔を覗き込み
私は彼の言葉でふと我に返り
彼を見つめた瞬間に
何故か無意識のうちに
自転車を勢いよく走らせていた

知己が後ろから声を
かけているのが分かっても
振り返らずに自転車を
無我夢中でこぎ続けた
そして私は家に着くなり
勢いよく階段を上がると
一目散に部屋に駆け込んだ

『帰ったの?』と
母親が叫んでいた
私は何も答えなかった
『もえ、帰るなり、どうしたの?』と
母親が私の部屋の
扉を叩きながら
言葉をかけている
『なんでもない、疲れたから、寝る』と
私は制服を脱ぎ捨て
布団に潜りこむ

目を閉じるとあの二人が
仲良く話をしている光景が
鮮明によみがえった
そして何かが切れたように
涙が溢れて止まらなかった

次の朝
目を少し赤くさせ
目覚ましが鳴る前に起きる
リビングに行くと母親が
朝食の支度をしていた
味噌汁のいい香りがし
父親が新聞を片手に
コーヒーを飲んでいる
『おはよう』と私は声をかけ
洗面所に向い顔を洗っていると
『何かあったの?』と
タオルをもち母親が問いかけた
私は何も言わずに
首を左右に振った
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