となり
そして今日も携帯を広げると
一通メールが受信されていた

¨おはよこのメールを見てる時は、部活に行く頃だね記録会、代表になれるように頑張って記録会、梨沙子と信吾と必ず応援に行くからだけど無理はしないでね¨と
もえからのメールだ―
携帯を見ながら顔がにやける

彼はどちらかと言うと
メールが得意じゃなかった
用件は電話の方が
楽だからといつも電話だった

そんな彼にメールは電話と違って
文が残るからメールのがいい…と
私の言葉に慣れないメールを
一生懸命に彼は覚えた
だけど実際は毎朝
携帯と睨めっこで
ボタンとの戦いの日々だった事は
この時の私は知らないこと
だけど彼は苦痛と思うより
愛しい気持ちでいっぱいだったんだ

¨おはよ。これから部活行くよ。ありがとう、必ず選手になるから¨
送信―
短文で絵文字もないメール文
だけど今の彼の精一杯の
もえへ対する気持ちだった―

部室に荷物を置き
グランドに行くと
まだ朝早い時間にも関わらずに
部員が数人走っていた

中には彼と同じ
短距離の選手の姿に
彼は少し力が入った

記録会の代表を選ぶ日まで
もう時間もない
彼は少しでもタイムを
縮めるようにひたすら走り込んだ
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