となり
校内は静かで廊下を歩く
私の足音が響いた
階段を上がると
グランドで朝練をしている
生徒の姿が見えた
私は窓ガラスを開け
グランドを見つめた
彼の姿はなかった

階段を一段づつ上がると
チューニングをしている
楽器の音が段々大きく聞こえ
私は少し小走りになった
ガラッ…と静かに
部室の扉を開けると
一斉にみんなの視線を感じ
少し恥ずかしそうに
『おはようございます』と
私は挨拶をし自分の席に座ると
部長が私に近づき話しかける

『おはよう。朝練ご苦労様ね。クラリネットは調子どう?』と
先輩はとても柔らかく笑った
『はい、何とか大丈夫です。頑張ります。』と
私は力強く答えた

クラリネットを片手に持ち
チューニングを始めると
今日の音―
いつもよりも調子が良かった

そして私はグランドに
自然に目が行くと
いくつかの運動部が
朝練をしている中から
さっきはなかった
彼の姿が目に入る
人がグランドに沢山いるのに
なぜか彼を見つけだすのに
時間がかからなかった
そして私は再び
クラリネットを吹くと
その音色はいつも以上に
綺麗な音を奏でていた
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