となり

¨もえ、今すぐに会いたい…¨
ただそれだけの短文…
だけど彼は何かに
すがる気持ちで一杯だったんだ

メールを送信して
数秒すると電話が震えた
彼は携帯を開くと
画面には゛もえ゛の文字がある
彼は微弱に震える手を抑え
電話に出ると受話器越しから
久しぶりに聞くもえの声―
彼は今にも泣きそうな
気持ちになっていた

『もしもし、空太？全然連絡取れなくて心配したんだよ。何かあったの？』と
もえの問いかけに
少し間を置き彼は呟いた

『もえ…今すぐに会いたい…』と
それ以上何も言わずに黙り込む
もえは何だか無性に
不安な気持ちになった

『空太？何かあったの？』と
もえは再び問いかけたが
彼は何も答えなかった
そしてもえは小さく息を吸い
『今、何処にいるの？』と
もえは違う言葉で問いかけた

彼はもえの問いかけに
゛電車の中にいる゛と告げると
もえは彼を迎えに駅まで向かった

彼はもうすぐで着くからと
電話越しに伝えると
電話は急に切れる

電話が切れいつもと違う
彼の様子がとても不安だった

そしてその不安が後に
私と彼の運命を狂わす
辛くて険しい終わりの見えない
闘いの幕開けになろうとは
この時の私には予想もつかなかった