となり
私は何度も同じ言葉を言う
彼のことがまだ信じられず
目の前で背中を向けた
彼の背中にすがる様に
手をあて再度問いかけた

『…嘘でしょ?ねぇ…嘘って言って』と
涙が自然に溢れ出す

『…ごめん。俺のことは、忘れて欲しい』と
最後に一言告げると
彼はそのまま私に振り返らず
切符を買いに歩きだした

私はその場に立ちつくしたまま
足が動かなかった
そして彼の姿はやがて
段々小さくなると
私は震える足を必死で動かし
彼に走り寄り彼の顔を見た

私を見るその目は冷たく
今まで見たことのない
彼の視線に私は体が凍りつく

『今までありがとう。さよなら』と
彼は言葉を残し
彼は改札口を通ると
そのまま階段を上がり
姿は見えなくなった

私はしばらく駅に立ちつくし
彼の言葉が頭の中で
繰り返し繰り返し流れると
彼の姿が無くなって
彼を失ったことを実感し
意識がなくなりそうになった

そして私は無意識に
真悠さんに電話していた
『もしもし』と
受話器から真悠さんの
声がすると私は勢いよく
『もえです。空太に何かあったんですか?朝いきなり会いたいって言われて、会ったら、突然別れて欲しいって、いつもと様子も違くて、私…』と
言葉が言葉にならなかった
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