となり
『病気って…ないない。すぐにでも学校行けるようになるよ』と
私は笑顔を作りプリンに
口をつけ梨沙子を見る

夕方まで梨沙子と
夢中になって話をし
『もう、こんな時間になっちゃった。じゃあ、私帰るね』と
梨沙子が席を立つと
母親が仕事から帰宅した
父親と一緒に病室に入って来た

『あらっ、梨沙子ちゃん、来てくれてたの?』と
母親は言うと梨沙子は
『はい、今帰えるとこです』と
軽く頭を下げた
母親は持ってきた
林檎を梨沙子に渡し
『これ持っていきなさい』と
笑顔を見せると
『ありがとうございます。じゃあ失礼します。またね、もえ』と
手を振りながら
梨沙子は病室を出た

父親が私の顔を見て
『具合はどうだ?』と
問いかけ『大丈夫』と
私は素っ気ない感じに答える

『もえ、明日は確か朝から検診でしょ?お母さんも来るから』と
ロッカーに持ってきた
スウェットをいれながら
母親は話ている―

明日の検診…
先日出来なかった
中絶をする話―
あの時に彼に言うはずだったが
さよならを告げられ
何も考えられずに
家族に中絶をすることに
同意してしまったが
今の私の気持ちは
はっきりと決まっていた
< 270 / 411 >

この作品をシェア

pagetop