となり
この子を失うわけにはいかない
彼を信じて今は一人でも
頑張らないといけないと
産む覚悟を決めたんだ

『じゃあ、また明日来るから』と
消灯時間少し前まで
母親と父親は病室にいると
椅子から立ち上がり
声をかけると二人は出て行く

夜になるに連れて
昼間は感じない
一人部屋の病室が
段々と広く感じる瞬間
そして私は消灯時間で
部屋の明かりを消され
真っ暗な病室で色々なことを
走馬灯のように考えてしまう…

彼と初めて会った日のこと―
隣の席にはいつも
当たり前のように
座っている彼の姿―
そして何よりも
私を愛しそうに見る目―
彼の優しい温かい手―
一生懸命に走っている姿―
全てが私の中に刻まれている

信じて待つと決めても
彼がいない寂しさは消せない
そして自然に涙が流れると
私の中で彼の存在が
自分で思っている以上に
大きいことを思い知らせる

¨泣き虫だな¨と
彼に言われてた台詞も
今は泣いても彼の
目には見えないくらい
彼は遠く私は孤独に感じる

だけど今は一人じゃないことを
確認するかのように
自分のお腹に手を当ててみる
眠れない夜も不思議と
自然に眠りにつけた
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