となり
眠りが深かったのか
朝食が運ばれるまで
目を覚まさなかった

『おはようございます。七瀬さん、朝ご飯置きますね。あっ、朝ご飯食べる前に体温計りますね』と
食事をベッド脇の棚に置き
看護婦さんは体温計を渡す

『おはようございます』と
私は挨拶をし体温計を脇に挟む
『午前中に検診があるから、時間になったら行ってね』と
時間が書かれた紙を渡され
私は頷きながら時計を見た
まだ朝の8時回った所だ

私は看護婦さんに
計り終えた体温計を渡し
朝ご飯に口をつけると
『おはよ』と
母親が病室に入ってきた
母親は窓を少し開けると
母親は椅子に腰をかけ
『もえ、林檎食べる?』と
昨日持ってきた林檎を
冷蔵庫からひとつ手に取り
皮を剥き始めた

私はゆっくり口を開く
『お母さん。聞いて欲しいんだけど』と
母親の顔を恐る恐る見る
母親は林檎を剥いたまま
何も言わない
私は続けて口を開く
『あのね…やっぱり赤ちゃん産みたい。私がお母さんとお父さんの子供として産まれて幸せと思うように、この子にも産まれて幸せって感じてもらいたい。諦めるのは簡単だけど、大人になって子供が出来ても、今いるこの子には二度と会えないだよ』と
私は自分の思い伝えた
< 272 / 411 >

この作品をシェア

pagetop