となり
『お父さん、お待たせしちゃってごめんなさいねぇ』と
母親が声をかけ助手席に座る

『もえ、忘れ物ないわね?』と
母親の問いかけに
私は『うん』と小さく頷くと
車はゆっくり走り出した

入院をして気が付くと
3日も経っていた
久し振りに感じる病院の外は
何だか新鮮に感じた

『このまま、買い物してお昼でも食べて行っちゃいましょうか?』と
母親の言葉に今まで口を
開かなかった父親が軽く頷く

『三人で食事なんて久しぶりね』と
母親が少し上機嫌に言うと
『何、食べるんだ?』と
父親の問いかけに
母親は少し考えながら
『もえ、何か食べたいものある?』と
問いかけると
私は何も答えなかった

そして少しの沈黙が続くと
父親が沈黙を破る様に口を開く

『もえ…父さんは、母さんが何も言わないなら、父さんもあえて何も言わない。だが、もえが決めたことで、この先母さんが悲しんだり苦しむようなことがあったら、父さんは、もえのやろうとしていることを賛成することは出来ない。父さんも母さんと同じ様に、もえが一番大切だと言うことを、きちんと覚えておきなさい』と
普段言葉数が少ない父親の
言葉が私の中で張り詰めた
何かがプツンと切れた様に
一気に涙が溢れ出した
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