となり
真悠は彼に近づき
彼の変わり果てた姿に
ますます正気がなくなっていた

『真悠、保健書と布団を持ってこい』と
直人は言うと真悠は
今にも泣きそうな顔で
彼の体を擦っていた
今の真悠には直人の言葉さえ
耳に入っていなかった―

直人は仕方なく
引き出しから保健書を取り
寝室から布団を持ち
真悠には上着を渡した

『真悠、上着着て準備しろ。お前がそんな、おろおろしてたんじゃどうするんだ。空太なら平気だ。しっかりしてくれよ』と
直人の言葉に真悠は
抑えていた涙を流しながら
首を何度も縦に振りながら
上着を着て寝室から
自分の持ち物を持つと
外で救急車のサイレンの音がし
直人は急いで玄関を出ると
救急車を誘導し始めた

『お願いします』と
彼が救急車に乗せられ
真悠を同乗させると
直人は軽く頭を下げた

『直人?』と
不安そうに真悠が言うと
『先に行け、俺も準備したら直ぐに行くから。しっかりしろよ。空太のこと頼んだぞ』と
直人の言葉に真悠は頷き
涙を拭いながら
彼の手を力強く握ると
『では、お願いします』と
直人は再び頭を下げと
救急車は大きなサイレンを
鳴らしながら走り出した
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