となり
始まりはドキドキしていた
胸の鼓動も次第に無くなり
指が自然に動いていた

私は演奏の合間に
舞台から見えた客席にいる
梨沙子を見つけると
そこには信じられない
彼の姿が見え消えていた
胸の鼓動が高鳴り始めた

だけど不思議と
指は震えなかった
演奏が終わり
舞台裏に下がると
部員達は演奏が終わって
緊張がとけたのか
ザワザワと話始めていた

私は周りの話声よりも
梨沙子の隣になぜ彼がいたのか
気になって仕方がなかった

確かに舞台から見えた彼の姿―
だけど梨沙子は
何も言っていなかった
それに彼にコンクールの
話をした憶えがなかった
なのにハッキリ見えた彼の姿
私は一人そわそわしていた

控室に戻ると先生が
演奏の出来を誉め
これからについての
話をしていたが
私はまだそわそわ落ち着かずに
話も耳には入っていなかった

そして他校も演奏を終え
予選の発表が行われ
無事に私の学校は
予選を通過したことを
部長が部員に告げると
明日からまた本選に向けて
練習が厳しくなることを
話していたがこの時の私には
コンクールのことなど頭になく
彼のことが気になって
仕方なかった
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