となり
『急に切るなんて、こんなに頑張って長く伸ばしたのに切っちゃうの?』と
母親は問いかけ私は頷き
『いいの、いいの。バッサリ行っちゃって。何かこうしてると、昔思い出すね、よくお母さんに髪の毛切ってもらってたよね』と
私は何かを吹っ切ったように
落ち着いた気持ちだった

母親は私の髪の毛を
櫛でとかしながら
『すごい長く伸びたね。昔は早く長く伸ばしてポニーテールにするんだって、よく言ってたのに』と
母親は櫛を入れながら言うと
『もういいの。今日は新しい自分になる儀式みたいなもんなんだ。私、強くなるって決めたんだ』と
私の言葉に母親は
『もう~わかった。本当に切るわよ』と
髪の毛にハサミを入れた
足元に束で落ちていく
自分の髪の毛が
自分の弱い部分―
泣き虫の部分―
自分の中の垢が落ちて行く
そんな感じがして
スッキリした気持ちだった

『うん、スッキリ』と
母親の言葉で私は鏡で
自分の顔を映して見た
生まれて初めての
ショートヘアーで
とても新鮮な感じがした
『せっかくだから、カラーも入れちゃう?』と
母親の言葉に私は頷き
そして綺麗な栗色の
ショートヘアーになった
『大人っぽくなった?』と
私の問いかけに
母親は軽く笑い頷いた
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