となり
急な立ちくらみに襲われ
私はその場で意識を無くし
そして倒れこんだ

自分の意識が遠のいて行くのが
はっきりと感じた
またいつもの暗闇の中に
私は引きずり込まれる
冷たくて音ひとつない孤独
私はどうして
ここにいるんだろう
自分の声さえも聞こえない




―――も――え―
――――も―――え―
―――もえ――――

声が…私の名を呼ぶ声…
私は暗闇の中を歩く
声は段々ハッキリ聞こえると
そこはいつしか
光満ちた世界が広がる
そこには笑顔で立っている
彼の姿があった
私は彼の元に歩み寄ると
そこにいるのは…
彼と…私?
そう私がいる―

今ここで彼と自分自身を
見ている私は一体誰?
彼に向かって私は
叫んでも彼はけして
気づくことはなく
私じゃない私に笑いかけ
そして¨もえ¨と囁く

私は彼に手を伸ばす
私の手は薄く透けていた
そこで始めて気づくんだ
もう私はここにはいないんだと…
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