となり
―――
『佐藤さんのお宅でしょうか?私、七瀬もえの母ですが、娘がいつもお世話になりまして、息子さんの空太君はいらっしゃいますか?娘のことで少し大事なお話がありまして、お電話じゃあれなので、直接お会いしたいと思うのですが』と
母が病院から家に帰宅し
彼の家に電話をしていたことを
私はこの時は知らなかった

そしてこのことが引き金で
私と彼が引き離されてしまうことを
暗示していたかのように
一歩一歩と暗闇が
近づいていることに
私も彼も気づくことが出来なかったんだ


翌日
目が覚めると体は
鉛のように重かった
体を起こそうともがくが
自分の体じゃないかのように
何もすることができない
ただ天井を見つめ
私は再び涙が溢れる
朝ご飯が運ばれても
一口も手をつけられなかった

『七瀬さん、おはようございます。昨日はよく眠れましたか?まずお熱計って下さいね。朝ご飯は一口も食べていませんね。気分は悪いですか?吐き気は?』と
看護婦さんの質問に
私は何も答えずに
体温を計り終えると
再び布団を深くかぶり横になった
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