となり
『もえさんが倒れたことは、空太には言っていません。何度も伝えようとは思っていたのですが、去年足に違和感があると言っていた矢先の出来事で…。息子は大事な大会の予選会の前日に部活中に倒れて病院に運ばれたんです』と
直人の言葉にもえの母親は
唾を飲みながら
不安な面持ちで聞いていた

『その時は、特に部活のやり過ぎで疲れからくるものと言って、本人はさほど気にしていなかったみたいなんですが、倒れたことで、検査をしわかったことなんですが…息子に病気が見つかったんです』と
直人は途中で言葉を飲んだ

『えっ?病気ですか?』と
もえの母親が言葉を挟むと

『はい、息子の病名は、脊髄小脳変性症と言って、脳にシコリができ神経を圧迫し、全ての機能を壊して行く病気だそうです』と
直人は再び口を吐き出した

直人の言葉にもえの母親は
頭の中が真っ白になった

『え?脊髄…機能?それは手術やお薬で完治する病気なんでしょうか?』と
彼女の言葉に直人は
少し冷めかけたコーヒーを
一口口に含んで
煙草に火をかけた
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