となり
『まずは、七瀬さん自身元気にならないといけないわね。もっと強くならないといけないわね。さっきも言ったように、今は自分よりもお腹の赤ちゃんのことを一番に考えなさい。食事もきちんと取って、精神的にも強くならないと』と
先生の言葉に私は
何度も頷きながら
涙を手で拭った

そして私は午後から検診受け
再び病室に戻るとそこには
母親が椅子に座って
林檎を切っていた

『もえ、ごめんね。午前中にこようと思ってたんだけど。検査は終わったの?具合はどう?』と
母親の問いかけに
私は軽く頷くと
母親の様子が少し
いつもと違って見え

『お母さん?何かあった?』と
私の言葉に母親は
少し強ばった笑顔を見せ
『何いきなり?何も無いわよ。そんなことより、看護婦さんに聞いたわよ。朝も昼も食事を取らなかったって、そんなんじゃ赤ちゃんも…』と
話の途中なのにも関わらず
私は遮るように
『はいはい、わかった、わかった。先生にも怒られたよ。お母さんまで同じこと言わないで』と
私は母親に言うと
テーブルの上には
母親が剥いた何故かそれは
うさぎの形に剥かれていた
私は少し不思議そうに
林檎を手で摘まみ
口にゆっくりと運んだ
< 334 / 411 >

この作品をシェア

pagetop