となり
『ちゃんと今日の夜は食事を取って、睡眠をちゃんと取って下さい。今日の検査で、安定されているようなので、明日は帰宅してもよろしいですよ』と
先生の言葉に私は
喜びながら手を上げた

そして先生が病室を出ると
『良かったわね。明日また迎えに来るから、お母さんそろそろお父さん帰ってくるから帰るわね』と
母親が椅子から腰を上げた

『お、お母さん…』と
私は母親を呼び止めると
『ん…何?』と
母親の問いかけに
私は母親にかけようとした
言葉を飲み込んだ

『ううん、何でもない。明日よろしくね』と
笑って見せると
『変な子ね。じゃあ明日ね』と
母親もまた笑い声をかけ
軽く手を振り病室を出て行く

私はいつもと違う
違和感を感じた
母親の態度の意味を
問いかけようとしていた
だが何故か母親の
無理に作っていたように
見えた笑顔が少し
不安に感じたんだ

それと…今日は…
何の記念日だったの?
看護婦さんにも言ってた通り
いつもお母さんが
記念日に剥いてくれる
ウサギの林檎―
お母さんはどんな気持ちで
剥いていたのか
この時の私には
何ひとつわからなかったんだ
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