となり
『お、お母さん?』と
私の呼びかけに母親は
ニッコリ笑うと
『さぁ、早くお鍋の材料買って帰ろうか』と
それ以上何も言わずに
カートを押しながら
母親は野菜を選んでいた

この時―
私は知らなかったんだ

私が学校で倒れた時に
病院で産婦人科に
通っていた所を
近所の人が目撃していたことで
私が中学生と言う年齢で
子供を産むと言う事実で
学校も行けなくなったことが
既に回りには影口のように
コソコソ話をされていたことに
何も気がつかなかった
そしてそれは母親にまで
危害が加わっていたこと
母親は何も言ってはくれなかった

そのことを知った時は
私はとても悔しいと思った
そして母親に悲しい思いをさせ
少し寂しかったんだ

スーパーで買い物を済ませて
家に帰ると私は
一目散に自分の部屋に戻った

『もえ?』と
階段を勢いよく上がる
私に母親が呼びかけると
『少し休みたい』と
言葉を残し部屋に入った

私は机に置かれた
携帯の充電器に
携帯を挿し電源を入れると
達也からきたメールに
再び目を通した

やっぱり間違いない
彼が入院をしたと書いてある
入院…
彼に何かあったのだろうか?
私は不安な気持ちで
達也にメールを打ち始めた
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