となり
『今日も、食べていませんね。佐藤さん、これお薬ね。ちゃんと飲んで下さい。今日も、点滴射ちますね』と
看護婦さんの言葉に
彼は何も言わずに
渡された薬を飲むと
点滴の針を腕に刺された

『終わったら言って下さい』と
看護婦さんは告げると
真悠は『はい』と
小さく答え頭を下げると
看護婦さんは病室を出て行く
彼はそしてゆっくりと
ベッドに横になり目を閉じた


夢を見た―
初めてもえと会った日…
初めてもえに告白した日…
初めてもえと結ばれた日…
全てがもえでいっぱいになる
満たされた幸せだった
夢の中でしか今は会えない
もえ―
もえ―
もうこの手で掴み
抱きしめることは
出来ないのだろう
離れるなんて思ってもなかった

もえ―
もえ―
もえ―
何度も呼んでも
もうこの声は届かない
だけどずっと呼び続けた
ただ夢の中でずっと―
もえ―
会いたいよ…

『空ちゃん、今日も泣いてるんだね。ごめんね、何も出来なくて』と
彼が眠りにつくと
涙が溢れている
真悠はそんな彼の寝顔を見ては
何も出来ない自分を悔やんでいた
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