となり
大会も無事に終え
優勝は出来なかったものの
銅賞を取ることができ
引退する先輩達は
出来のいい演奏が
最後に出来たと喜んでいた
だけど先輩達とは裏腹に
私はあの日のことが
気になっていたせいか
満足のいった演奏なんて
これっぽちも出来ていなかった

そして長いようで短い夏休みも
先輩の引退と共に終わりを告げ
新学期が始まった

久し振りの教室に入ると
変わりのないクラスメイトの
ワイワイと話をする声
変わったのは休み前と比べて
日焼けして真っ黒の
生徒が目立つだけだ

『もえ~おはよう』と
梨沙子に声をかけられ
私は振り返りながら
『おはよう』と
言うと静かに席につく
『どうした?何かあった?』と
心配そうに私の顔を見て
私は何も言わずに下を向く

『もえ?』と
梨沙子は再び声をかけ
私は梨沙子の顔を少し見て
言葉を飲み込んだ

『やっぱり何かあった?』と
再びの梨沙子の問いかけに
私はあの日のことを思い出し
顔を机に隠し伏せた

『よしよし』と頭を撫でられ
私は自然にまた涙が溢れ
声にならない声で
梨沙子にあの日のことを話した
< 35 / 411 >

この作品をシェア

pagetop