となり
ガチャッと病室の扉が開き
車椅子に座った彼が
看護婦さんと一緒に入ってきた

『あらっ佐藤さん、いらしてたんですか?調度今、検査が終わった所ですよ』と
看護婦さんの言葉に
直人は軽く息を詰まらせながら
『すみません。ありがとうございました』と
看護婦さんに頭を下げると
看護婦さんはニッコとし
頭を軽く下げ病室を出て行く

しばらく二人の間には
沈黙が続くと直人は椅子から立ち
窓を少し開け大きく息を吸った

『空太…。検査はどうだったんだ?具合は大丈夫なのか?』と
直人の声は少し震えていた

彼は父親の直人にでさえ
言葉を交わすことはなく
返答のない問いかけに
直人は吸った息を今度は吐いた

そして再びもえの
母親の言葉が脳裏に蘇り
さっき見てしまった
彼の日記とシンクロしながら
直人は再び小さく
『はぁ~』と息を吐くと
彼に再び問いかけた

『空太…、もえちゃんに会いたいか?』と
直人の言葉に彼は
視線を直人に向けた

『会いたいか?』と
直人は彼に再び問いかけるが
彼は何も言わずに直人を
強く見つめていた

『なぁ、空太。このまま何もせずに、病院で過ごすつもりか?やっぱり家に帰ろう』と
直人の言葉に視線を反らす
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