となり
『じゃあ、空ちゃんまた明日来るね』と
真悠は彼に言うと
いつも病室に夜ご飯が
届く少し前に病室を後にする

真悠が帰った後
薄暗くなった病室は
何だか切なく感じるくらい
孤独な気持ちになる

彼は枕の下からノートを取り出す
『はぁ』と一息漏れると
少し震える手を抑えながら
彼はノートを開きペンを持つ

○月×日
今日は、朝から検査があった。昼前に病室に戻ると、父さんがいた。父さんいつもと様子が違っていた。父さん…俺どうしたらいいのか、わからないんだ。もえ、会いたいよ。

『もえ…』と
彼は別れを告げてから
片時も忘れたことがないくらい
もえに会いたいと思い続けていた

トントンと扉を叩く音がし
看護婦さんは夕食を持ち
病室に入ってくると
テーブルの上に食事を置いた

『佐藤さん、お食事持ってきましたよ。今日は、少しでも多く食べて下さいね。きちんと食べないと、体力が低下しちゃうわよ』と
看護婦さんは言うと
病室から出て行く

彼はお茶を口に入れ
そして少しづつだが
看護婦さんの言われた通り
食事に手をつけた
今日は吐き気がなく
食べ物が胃に流れるのが
わかるくらいスムーズに入る
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