となり
彼は食事の三分の一を食べ
そして渡された薬を飲むと
ベッドに横になった

毎日朝から検査や何やらで
一日が短く感じるくらい
彼は慌ただしく過ごすためか
夜食事を済ますとすぐに
深い眠りについてしまっていた


―真悠は彼の病室を出て
家に真っ直ぐ帰宅すると
部屋の電気を付けずに
ソファーの上に直人が座っていた

『直人?』と
真悠は声をかけリビングの
明かりを付けると
直人はソファーの上で
丸まりながら一人うつむいていた

『直人。いつ帰ってきたの?電話切った後にすぐ帰ってこないから、空ちゃんの所に行ったのかと思って、私病院に行ったんだよ。直人、もえちゃんのお母さんとはどうなったの?』と
真悠の問いかけに
直人は何も答えなかった

『直人?』と
真悠は再び呼びかけ
直人の隣に静かに座った
直人は拳を握りしめながら
涙を流していた

真悠はそれ以上何も言わずに
直人の強く握りしめられた
拳をそっと両手で優しく包むと
直人は真悠の胸に頭を当て
体を震わせ泣いた
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