となり
梨沙子達がそんな話を
しているとは知らずに
彼が病院に入院してから
一ヶ月が経とうとしていた

そしてもえもまた
妊娠して四ヶ月目になり
季節もまた春から
夏に変わろうとしていた

『信吾、こっちだよ。もう早くしてよね。昨日遅刻すんなってあれほど言ったのに』と
梨沙子は信吾のお尻を
バッグで叩きながら
唇を尖らしながら言うと
信吾は眠そうな顔をしながら
やる気が無さそうに歩く

『もう~、もっとシャキッとしてよね。何か服装もだらしなくない?』と
梨沙子は信吾のお尻まで
下がっていたズボンを
腰まで上げながらまるで
母親の様な物言いだった

『うるせ~な。これは、わざと下ろしてんだよ。流行りのファッションなの』と
梨沙子が上げたズボンを
再びパンツが見えそうなくらい
下げるとダラダラしながら
ゆっくり歩き出した

『何がファッションよ。後ろから見たら足が短足で、ズボン引きずった金さんみたい』と
梨沙子は大きな声を出し笑うと
信吾は少し不機嫌そうに
梨沙子を見つめると

『うっさい。もう早く行くぞ』と
声をかけると今度は
足早に駅に歩いて行った
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