となり
梨沙子は何も言わずに
私の話を聞きながら
優しく頭を何度も撫でた

そしてこの日をさかえに
私は彼を少しづつ避け始めた
それは知己と同じで別に
彼と喧嘩をしたわけではないし
嫌いになったわけでもなく
ただ無意識に彼と今までと
同じ態度で接することが
今の私には出来なかった
それは私が自分の彼への
恋愛感情を知ってしまったから

そんな私のよそよそしい態度に
彼は疑問を抱きながら
どうしていいのか
わからない様子でいた
梨沙子もまた私と彼の間で
何も出来ない自分に
イライラを隠し切れなかった

夏休み明けからは
しばらくの間は
吹奏楽部は大会も終え
自主練習的になり強制はなく
放課後は早目に帰宅出来る
それが私は少し安心していた

私の部室からは
グランドが嫌でも見える
窓際の部屋だった
どうしても
彼を見てしまう自分がいる
体は避けていても目線は
気が付くと彼に向いていた
席は隣だから仕方ない―と
自分に言い聞かすように
気持ちは正直になってしまう

だけど教室でみてる
彼の姿は見れても
今の私にはグランドにいる
彼の姿は直視できるはずはない
そこにはきっと知己がいるから
二人の姿を見られるほど…
今の私はそこまで強くなかった
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