となり
『妊娠のことか?』

『えっ?知ってたの?』

『木村から聞いた。木村が信吾と来てくれたからこそ、俺はここに来る決心がついたんだから。俺、病気のこと知って、父さんや真悠さんに沢山嫌なこと言って沢山傷付けた。達也もずっと心配してたのに、俺知らん顔して言葉も発せずに脱け殻のように過ごしてたんだ。どうせ今の医学では治せない不治の病なら俺、このまま死んでもいいって感じてた。そしたら木村がガツンと渇を入れてくれて、もえの妊娠のことも話して言った。正直、もえが妊娠したって聞いて、俺はどうしたらいいのか、今もわからない。だけど、俺の残された時間…もえのそばにいたいって感じたんだ。もえに俺のそばにいて欲しいんじゃなく、俺がもえのそばにいたい…ってそれじゃダメかな?』と
彼の言葉を最後に
私達の会話が止まった
少しの沈黙が流れると
彼は私の手を包むように握り
『ダメかな?』と
再び問いかけると
私は彼の目を見つめ
思い切り首を横に振った
彼は安心したように
笑顔を見せポンポンと
私の手を叩くと絆のように
互いの指にはめられた
指輪がキラリと光った
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