となり
今まで賑やかだった病室が
一気に体温がなくなったように
寂しく孤独を感じた

みんなが帰ってまもなく
夜ご飯が運ばれると
私は黙々と食べていた

トントンと扉が叩かれ
ゆっくり扉が開き
母親の姿が見えた

『お母さん…』と
私は呼び掛けると
母親は回りを軽く見渡し
中に入り込む

『夜ご飯中?』と
母親の問いかけに
『お母さん、今日はどうして遅いの?いつも早い時間に来るのに』と
私の言葉に母親は黙り込み
椅子に腰を掛け鞄から
林檎を取り出すと
いつもの様にウサギの形に
林檎をひとつづつ剥いていく

『お母さん?』と
私の呼び掛けに林檎を剥く
手が少し止まると

『会えたの?』と
母親の問いかけに
今日彼が病室に来ていたことを
母親は知っていたことに気づいた

母親は林檎を再び剥き始めた

『お母さん、知ってたの?』

『うん…今日、空太君がもえに会いに行くこと、空太君の親御さんから連絡が来たの』

『真悠さん…』

『一生懸命に二人が会うことを許してあげて下さいってお願いしてた』

『えっ?』
< 402 / 411 >

この作品をシェア

pagetop