となり
『しっかりしなさい。初めからわかってたことでしょ。あんなことで、いちいち気にしてたら、赤ちゃんなんて産めないわよ。この先、こんなことよりも沢山辛いことが待ってるのよ。それを乗り越えてこそ、お母さんになれる証なんだからね』と
母親の言葉が私の胸に響いた

『七瀬さん』と
再び受付から呼ばれると
私は軽くめを瞑ると
一呼吸おいて目を開き
椅子から立ち上がった

『では、お待たせ致しました。こちらが母子手帳と書類になりますね』と
女性から茶色い大きな袋を
受け取ると私は軽く頭を下げ
『ありがとうございます』と
一言言うと母親の元に戻った

『もらった?』

『うん』

『じゃあ、お父さん待ってるから、行こうか』

『うん』と私は
歩く母親の後ろから歩き
手にした母子手帳の袋を
しっかりと胸に抱くと
何だか気持ちが温かくなった

『お待たせしました』と
母親は父親に言って車に乗ると
父親は軽く頷き
車をゆっくり走らせた

『お昼も近いし、ご飯済ませて帰りましょうか?』と
母親の言葉に父親は軽く頷く
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