となり
朝ご飯を食べ終え部屋に戻り
身支度を済ませて
再びリビングに行く

『具合は?もう行く?ちょっと待ってて』と
母親が声をかけ私は軽く頷いた
『お母さん、先に外で待ってるね』と
玄関に向かい外に出る

学校の場所は家から少し
離れた所にあったが
毎朝自転車で通っていた
家を出ると目の前には
春になると桜が
色鮮やかに咲いて
綺麗な遊歩道が続き
そこを自転車で通るのが
お気に入りだった

母親は心配な顔で
『具合は平気?』と
朝から何度も問いかけたが
私は気分が良かったせいか
『大丈夫、大丈夫』と
自分の体調を気にしなかった
そして私達は車に乗り走り出す

家から少し走ると
小さな坂道にでる
毎朝この坂道を
勢いよく自転車で上がった
始めの頃は
立ちコギで上がった坂道
段々楽に上がれるように
なった時はとても
嬉しかったのを
今では懐かしく思えた
毎朝変わらない
この道も今日の私には
いつもとは違って見えた

初めて恋をした
涙も沢山流した
もう涙はでない
だけど何ひとつ
後悔もしていない
今はお気に入りの
桜の花は茶色く
枯葉に変わり
ザワザワと風で揺れている
それがなんだか
私の鼓動の音と
シンクロしているようだった
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