となり
母親は彼が病室に来てからも
話は止まずに話をしていた
ようやく疲れたのか眠りにつき
私は席を立ち上がり
『じゃあ帰るね』と
病室を出ると彼も椅子から立ち
『送るよ』と
私の後ろに続き扉を開けた
廊下は静かで音もない
私達は会話もせずに歩いた

病院の外に出ると
冷たい風が吹き抜け
少し肌寒く体が震える
彼は何も言わずに
私の少し前を歩いている
私は彼の背中を見つめ
ふと彼の途中で切れた
メールのことを思い出し
足を止め口を開いた

『あのさ、今日送ってくれた、瑞木君のメール…、文が途中で途切れてたけど』と
言葉を切り出すと
彼は足を止め立ち止まり
少し間をあけ振り返った
その時の彼の顔は
不安になるほど曇っていた

彼は私の顔を見て
『ここ座る?』と聞き
そして近くにあった
べンチに座ると
一息ため息を吐き
彼はゆっくり口を開いた
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