となり
そして私は軽く笑い
再び口を開いた
『さっき、瑞木君が病室に来る前に、お母さんと色々な話をしたんだけど、瑞木君のことを話していたら、お母さんが教えてくれたんだ。瑞木君が生まれた病院には、とっても大きな木があって、その木はお母さんのいた病室からよく見えてて、いつしかお母さんのお気に入りになってたんだって。天気がいい時はその木の下に座り、お父さんと産まれてくる、瑞木君の話をしたんだって。予定日が来てもなかなか瑞木君は産まれなくて、お母さんよくその木に、早く産まれますようにって願掛けもしたらしいよ。やっと陣痛がきて、真夜中だったけどお父さんも病院に駆け付けてくれて、無事に瑞木君が生まれた時、瑞木君を抱きしめながら、お母さんに何度もありがとうって言いながら涙してたって、お父さんも瑞木君のこと大切だったんだね。そして、病室から見える木を三人で見つめ、地に根をしっかり付け、立派で太く逞しく空に届きそうなくらいに育ったこの木のように、この子も育って欲しい…って、¨空太¨と付けようって、お父さんが付けた名前なんだって』と
私は話すと彼は今まで必死に
抑えていた涙を流すと
声を押し殺していた
私は彼の手を握ぎり
何も言わずに隣で
空を見つめていた
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