となり
その女性は何かに
気付いたのか少し小走りで
私達に近づき声をかけた

『そ、空太くん?』と
彼女は言うなり
勢いよく彼に抱きつき
涙を流している
彼はよく状況が理解出来ずに
その場に立ち尽くしていると
玄関から今度は男の人が
出てくるのが見えた
私はその人が
彼の父親だと気付いた
そしてその男の人もまた
彼を見つめ驚きながら
『そ…空太?』と
小さい声で囁いた

そして私達は家の中に通された
部屋の中は綺麗に片付いていて
二人が幸せな生活を
送っているのが伝わってきた

『どうぞ、座って』と
その女性が声をかけると
彼は何も言わずに
ソファーに座り下を向いている

その女性はキッチンから
温かい飲み物と
クッキーを運びながら
『よく来てくれたわね。どうぞ』と
言って差し出した
私は軽く会釈し
温かい飲み物に手を伸ばした

そして彼の父親は少し弱々しく
『空太…元気だったか?ずいぶん大人っぽくなったな』と
彼を見ながら言ったが
彼は下を向いたままだった

そして沈黙が続くと
私は彼の腕をつつくと
彼を見つ首を縦に振った
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