となり
彼は私から視線を外し
父親を見ると息を整え
今にも泣き出しそうな声で
『お願いします…か、母さんに会って下さい』と
小さい声でそして震えながら
頭を下げ何度も言葉を繰り返す

彼の尋常じゃない様子に
『碧に…碧に何かあったの?』と
父親より先に彼に近づき
そして強く肩を掴み
彼女は大きな声で叫んだ…

『おいっ、真悠止めるんだ。空太が驚いているだろう』と
父親は彼女を彼から離すと
父親は彼女をソファーに座らせ
同じ質問を今度は父親が
彼に尋ねると彼はゆっくりと
今まで意識がなかったことや
そして病院で言われた言葉―
もうお母さんが長くないことを
父親に全てを告げた

父親は彼の言葉を聞くと
自分の膝を叩きながら
『碧は、わかってたんだな。自分がもう長くない…だから急に離婚しようなんて』と
父親の言葉に彼はずっと
聞きたいと思っていたことを
父親に問いかけた

『父さんは母さんと結婚して、本当に幸せだった?』と
彼の言葉に父親は真剣な顔で
『碧と結婚して後悔はなかったよ。空太が産まれたことも、父さんには、かけがえのないものだ。それは、離れた今も変わらない。碧といた時間は幸せだったし、この先の人生も一緒だって思ってたんだ』と
直人は言った
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