となり
ジリジリジリ…
目覚まし時計が鳴る
またいつもと
変わらない朝がきた

彼の父親に会いに行って
もう何日が過ぎたのだろう
彼はあの日以来
父親の話をしない


朝食を済まし身支度を済ませる
部活を休部していたままで
朝練にも参加していないせいか
のんびりと自転車を
こぎながら学校へと行く

教室の扉を開けると
ワイワイと話声が広がっている
自分の席に向かうと
隣の彼の席に鞄があった―
だけど彼はいない

『もえ~おはよう』と
梨沙子が声をかけた
私は辺りを見渡し
『おはよう』と言い返す

チャイムが鳴ると
ザワザワと人が動きだす
彼の姿はまだなかった

私は教室を出ると
自然に足が向かった
そう―それは
初めて彼に会った桜の木だった

チャイムが鳴った後の廊下は
さっきまでガヤガヤしていた
人ゴミはなく音ひとつない
静かで寂しく感じた

体育館に続く外廊下に出ると
風がひんやり体に当たり冷たい
そして私は初めてこの道を歩き
桜の木の下で彼と
出会ったことを思い出した

木のそばまでくると
葉っぱが風で
ザワザワと揺れている
回りを見渡し…
『瑞木君いるの?』と
私は小さな声で問いかけた
だけど…返事はなかった
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