となり
私は立ち去ろうとした
その時バサッと後ろから
音がし振り返えると
『さぼんな~ょ』と
いつもと変わらない
笑顔で彼が立っていた
『ちょっといるんなら、返事しなさいよ』と
私は少しホッペを膨らませた

『久しぶりだな。学校に来るのも、この桜の木に来たのも、何かすごい新鮮だな』と
彼は木を触りながら
優しく笑って見せた

『学校来るなんて、全然言ってなかったじゃん。どうしたの?お母さん、もしかして具合よいの?』と
私は彼の顔を覗き込み
問いかけたると
彼の表情が少しくもると
『今日、病院に父さんと真悠さんが来る。俺は病院にいないほうがいいと思うから…』と
彼は私に背を向けた

『どうして?』と
私は彼に近づき
そして彼に触れようとした瞬間
彼の目からは
沢山の涙が流れていた

私はそんな彼を後ろから
ギュッと強く抱き締めた―
やっぱり何かあったんだ
あの日以来―彼は父親のことを
口にしなかったのに
急に病院に二人が来るなんて
おかしいと感じた
そして私は急に
不安な気持ちになった
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