となり
私は何も言わずに
彼をギュッと強く
抱き締めて続けて
彼が口を開くのを
じっと待っていた

授業の終わりのチャイムが鳴り
ガヤガヤと生徒の
声が聞こえ始めた
彼は涙を拭い私から離れ
そして軽く笑うと
『行こうか』と
ゆっくり歩き出す
私は彼の腕を掴み
彼の顔を見た
彼は悲しい顔をしながら
必死で笑顔を作ろうとしていた

再び授業が始まるチャイム鳴り
再び静けさが戻ると
『授業始まっちゃったじゃんか。早く行くぞ』と
彼は私に背を向け歩き出した

『瑞木く…ん』と
私は再び彼の腕を掴み
『私には無理しなくていいよ』と
彼に言葉をかけると
彼の作り笑顔はまた
涙が溢れ出した
私はそんな彼を愛しく
何も言わないまま包み込んだ

午前中の授業も終わってしまい
昼休みに入るまで
私達は桜の木の下にいた

彼は大分落ち着き
私は彼の顔に手を当て
『お母さんの所に行ってあげな』と
言葉をかけると彼は頷くと
早退し病院に向かった
私は教室に戻ると
梨沙子が昼食を食べずに
私を待っていてくれた
そして私達はいつもの様に
売店で昼食を買い
屋上に向かった
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