となり
学校が終わると
私はいつもと変わらず
彼の母親の病院へと急いぐ
今日は彼の様子が
いつもと違っていた
見慣れた病院までの道が
今日は何故か少し不安で
足取りも重く感じた

階段を上がり病室に近づき
扉に手を掛けると
中からは泣き叫ぶ声が聞こえ
不安が更に大きくなる

私はそっと扉を開くと
ぶつかるように中から
先生と看護婦さんが
大きな機械を運びながら
病室を出て行くと
病室の中はいつもと違う
空気が流れていた
そして私はそれ以上
病室に足を踏み入れられず
扉の所に立ち尽くしていると
彼の父親が私に気付くと
『この間はありがとう。来てくれたんだね、中にどうぞ』と
言葉をかけられたが
何だか様子が変だった
病室の中に入ると
ひんやりとしている
先に進むと彼は何も言わずに
床に座り込んでいる
私は彼に声をかけずに
更に奥へ向かうと
その奥からは
ひたすら泣いている
女の人の姿があった
―真悠さんだ
私はカーテンをゆっくり捲る

そこには
ただ眠っているかのように
ニコヤかな顔をした
彼の母親がベッドに
横になっていた
私は彼女の手を握る
その手はまだ暖かかった
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