星にキス。




そう、空は青い。


「春、だね」


「そうだね、あたしたち“受験生”だよ」


まだ、受験生なんて実感が湧かない。


3階の窓から見下ろす景色は、友達と楽しそうに登校してくる後輩たち。

そして――― ほんのり、柔らかいピンク色した桜が目に映る。


「春、だねー」


「ナツったら! さっきからそればっかりじゃん」


「いいじゃん、春なんだからー!」


暖かくて、優しいこの柔らかいこの春の空気が好きなんだ。


窓を開けたら、まだ少し、冷たい風があたしを刺激するから…… 窓は閉めたまま。

だけど、窓から入る太陽は――― 暖かい。



「ハル」


「ん、なに?」


「化学の宿題、見せて」


「えぇーっ、やってないの?」


春のこの陽気に、頭がほわほわして宿題をやり忘れた。


「春のこの陽気は関係無いから!」


ハルの厳しい言葉が飛んできた。




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