黒い飴玉
「お前は今まで悪夢を見ていた。だから“夢喰い”の名の通り俺がお前の悪夢を飴玉にした」
私の異変に対して何の気配りもせずに未だに淡々とした説明を続けた。
「だからここにいるの?見る夢がなくなってしまったから」
私が頭をさすってたからか、少しずつ痛みが落ち着いてきて、やっと言葉がちゃんと出てきた。
「そう、本当は俺が喰ったとき起きるはずだった……けど……あんたは起きなかった。だから、ここに…――夢の裏側に連れてこられた」
「夢の裏側?」
現実からかけ離れすぎていて私には理解しがたい、その事が見て分かったのだろう獏は私に何も聞かずに説明を続けた。
「多くのものに表と裏その二つが存在しているなら……夢も同じようにある。お前がいつも見ている夢の表の世界、そして……それを作っている裏の世界」
獏は相変わらず抑揚のない淡々とした口調で続ける。
「裏の世界……そしたらどうして……そんな所にあなたはいるの?」
話を聞く限り、普通は入れそうもない重要な場所だ。
「俺はその世界の異分子だから」
一瞬目を細めると、真剣な表情で私を見つめながら言った。