黒い飴玉
「……」
私の言葉が意外だったのか不思議そうな表情で私を見つめる。
「珍しいな。たとえ一時だとしても、何にでもなれるんだぞ。皆に敬愛される救世主から――皆に畏怖される魔王まで、なのに……なんでそんな事を望む?」
獏はとても不思議そうな顔をしている……確かに私の考えは可笑しいと思う。たとえ私なりの考えがあったとしても。
「あなたは自分の魅力に気がついていないだけ。救世主や魔王なんてのは誰かによってまつりあげられたもの。まつりあげてくれる人さえいればなれるわ」
私は初めて会ったときから彼の不思議な魅力に心焦がれていた。
この世のものとは思えない端正な顔立ちに引き込まれる程強く感じる彼の強い存在感。
彼の全てが私を引き付けていた。
「けどあなたは違う!あなたという唯一無二な伝説的な存在。私にとってあなたはどんな夢よりも魅力的に感じる」
私は獏のことをもっと知りたかった。