黒い飴玉
「それ程……悪夢は魅力的なのね」
私の悪夢を大切に握る彼の左手を愛おしく感じ、包み込むように両手で握った。
「……」
そんな私に戸惑いながら私の両手を見る獏と視線がまじわるとクスリと微笑んだ。
彼の手から私と同じようなぬくもりを感じ彼も私も変わらない様な感じがした。
「もう……大丈夫」
獏の手を通して……
再び先ほどの男の人の声が私の体に浸透していくように心地よく聞こえてきた。
その声を聞くと安心するように、ふわりと力が抜ける感じがした。
「……っと」
バランスを崩し倒れそうになった私を獏が優しく抱きしめるように支えた。
「大丈夫か……」
私が獏を見ると心配そうにたずねた。
「えぇ……」
かなり近い距離で視線がまじわりドキッと心臓がはねたようなきがした。
「そうか……」
私とは正反対に冷静な表情で私を見ると
「大丈夫ならいい」
と一言言うと何も言わずに私から離れた。