涙飴
本当は、そんな理由じゃない。
だけど、本当の事など言える筈もなく、あたしはプリントへ視線を落とす。


「別にそんな気にすることねーだろ!俺ら幼馴染みなんだし」


大地にとって、あたしはただの幼馴染み。
そんな事は、当の昔に分かっているつもりだけど、本人の口からこんなにもハッキリと言われると、やっぱり悲しいものがある。


「まぁ、そうだけどさ……」

何だかあたしだけ変に意識している様で、恥かしさが込み上げて来る。


「いちゃいちゃすんのはいいけど、プリントやれよ!」


「先生!いちゃいちゃなんてしてませんよー」


大地が笑いながら否定する。


「先生!出来ました」


プリントの問題が終わり、教卓の上にプリントを提出する。


「どれどれ……」


先生は、胸のポケットから赤ペンを取り出し、丸をつけ始めた。

いくつか間違えてはいたものの、思ったより正解数が多かった。


「結構出来てるなぁ……おっ!この問題ひっかけなのによく出来たなぁ!」


「まあね。こんぐらいちょろいもんですよ」


あたしは得意気に答える。


「いや~織原にこの問題が解けるとはなぁ」


「失礼だな!」


なんて言ったけど、この前までのあたしだったら一生かかっても解けなかっただろう。
その問題は、五十嵐に教えてもらった問題だった。

五十嵐が丁寧に教えてくれたお陰で、あたしの頭にしっかりと刻み込まれていたのだ。
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